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実写版ゴールデンカムイ感想-やりやがった!!実写版すげえッ-

実写版ゴールデンカムイ制作決定の報に、カレーライスを見るアシㇼパさんのような表情になった人は多いと思う。私も「いや無理だろ……」と思っていたのだが、いざ公開されてみると意外と評判がいい。なのでちょっと期待して観に行ってみた。

結論:けっこういい感じ。

キャストさんも割とハマっているし、丁寧に話を追ってくれるし、何よりご飯が美味しそう! 観に行くか迷っている原作勢の方は、一度観に行ってみてもいいのではないだろうか。

※ここから先はネタバレありです。映画ではまだ描かれていない展開にも触れます。

秀逸なキャスティング

杉元佐一

実写化が発表されたとき一番話題になったのが、杉元を山﨑賢人が演じることだった気がする。私も正直「またか……」と思った。本人は悪くないんだけれど、実写版の主演はとりあえず山﨑賢人にすればいいと思ってなーい?

ところがどっこい、ちゃんと杉元だった。そもそも杉元はイケメン設定なので、山﨑賢人の顔はピッタリだと思っていた。問題はやっぱり筋肉ですよねぇ皆さん。実写版でも風呂屋のシーンが出てきて、ちゃんと脱いでくれたのだが、原作にも見劣りしない立派な肉体だった。

ちなみに山﨑さんはこの映画に向けて体重を10kg増やしたらしい。杉元ガチ勢もいいところである。なんなら今からラッコ鍋回にも期待できるというものだ。山﨑おまえ……ちょっと見ない間に急に……いい男になったな?

そして戦闘がかっこいい。実写版キングダムでもすごい戦いぶりを見せていた山﨑賢人だが、あちらの派手なワイヤーアクションと異なる、気迫あふれる近接戦にもしっかり対応。杉元の放つ殺気、鋭い視線を見事に表現していた。原作の杉元がよく纏っていたオーラまで見えた気がした。

残念ながら、原作の杉元がよくやる少女漫画のような可愛い表情・仕草は抑えめだった。とはいえ、あれを実写で頻繁にやると大袈裟になるから妥当な判断なのかもしれない。桜鍋のときは口あぐあぐやってくれたし。

アシㇼパ

アシㇼパさんも、当初は子役がやった方がいいのではという意見があった。しかし未成年に「オソマ」だの「███先生」だのと言わせるわけにはいかないので、子役じゃなくてよかったと思う。切実に。

山田杏奈さんはけっこう童顔で、もともとアシㇼパさんが大人びた性格なのもあって、年齢の違和感はそこまで無かった。個人的には眉がよかった。山田杏奈さんの眉がくっきりしていて、アシㇼパさんの力強さが現れていたように思う。

そしてなんといっても変顔! 白目を剥くわ顎を歪めるわ、とてもヒロインとは思えない変顔オンパレード。事務所よくOK出したな。かと思えば真面目なシーンではめちゃくちゃかっこよく凛々しい顔を見せてくれる、これぞアシㇼパさん! いいぞ、もっと変顔しろ!

白石由竹

実写版の白石の印象は、とにかくいつも動き回っているという感じ。私はそれがちょっと苦手だったが、原作同様のうざったらしさが醸し出されているとは言えるだろう。

レタㇻから逃げる場面など、アクロバットなシーンが少なくなってしまったのは残念だが、代わりにコミカルなシーンが多数追加された。杉元をおちょくって滑ったり雪を投げたりするシーンもそうだが、個人的には投げた手投げ弾が返ってきてしまうシーンが好きだ。明治のトムとジェリーか。それから、関節を外して鉄格子の隙間からぬらりと入って来る場面もめちゃくちゃ気持ち悪く、床を滑ってくるのも相まって笑ってしまった。

なお、意外だったのが2番目の囚人(笠原)と一緒に登場するという大胆な改変が成されていたことだ。映画の短い尺の中で分かりやすくまとまっており、良い改変だったと思う。木の棒に腕くくられたまま逃げる白石も見られたし。何気に白石と笠原が協力関係にあったっぽいのが面白い。お前ら気ぃ合うんだな。

牛山辰馬

はんぺん、意外と違和感ないな……というのが最初の感想だったりする。彼のトレードマークでもあるので、しっかり再現してくれて嬉しいところだ。

力強い猛牛のような雰囲気は原作のままだが、シルエットがけっこう変わってしまったのはやや残念。原作はもっと引き締まっていて、意外とシュッとしているのである(巨漢の割に、ではあるが)。しかし外見から受ける「圧」という点ではなかなかのものであった。

土方歳三

かっこよすぎ。それに尽きる。牛山が投げた女を華麗に回避し、「いくつになっても男子は刀を振り回すのが好きだろう?」ひぃー、これは観客全員夏太郎になりましたわ。

銀行破りのシーンでも、帽子を目深に被り堂々と闊歩する様子が明らかに異質な気配を放っていた。そして馬に乗り、和泉守兼定を掲げるところなど、もはや美しい。

次回または次々回で描かれるであろう茨戸編で、実写でも渋さ満点の鬼の副長が刀を振るうのが待ちきれない。楽しみにしていた銃の"あの"装填は今回見られなかったので、早く見たいものだ。

谷垣源次郎

残念ながら今回はそこまで活躍なし。しかし大谷亮平が良い意味での男臭さをプンプンさせてくれた。眉と髭が濃い! セクシーマタギの気配がするぞぉ……?

また、映画オリジナルで「お前はここに隠れていろ、杉元に見付かったら殺されるぞ」みたいなことをアシㇼパさんに言われていた。そしてこれは杉元が小熊に言った「静かにしてろよ、アシㇼパさんに見付かるぞ」と対応している。つまり谷垣=小熊ちゃんなのだ。まさかのファンサであった。

尾形百之助

推しなので実写化が一番心配だったが、眞栄田郷敦の尾形がめちゃくちゃ尾形だった。「なあんだただの尾形か」 特に目。あの死んだ目は完全に尾形すぎる。今回は残念なことに谷垣との対決まで行かなかったため、最後までイメチェンはしなかった。あの髪型見たかったなぁ。

髪は次回の楽しみにとっておくとして、杉元との対決がとても良かった。そもそも原作ではまだもっさりとしている時期なのだが、実写版では最初から尾形らしさが出ていた。なんなら短剣を構えるシーンは原作より様になっていた。戦闘描写も増え、尾形推しとしては満足である。「手に負えん片腕だけに」は案の定カットされてしまったが。

また、鶴見中尉の手に「ふじみ」と書く描写が追加。あれはなかなかいい映画オリジナルだった。原作最終盤を読んでいると余計に……。

それと二〇三高地にしれっといた気がするのだが、気のせいだろうか。あの特徴的な座り方は間違いなく尾形だと思うのだが……。

次回は確実にイメチェンし、谷垣相手にバチバチやるので楽しみだ。また、猫じみた仕草を眞栄田郷敦がどれだけ演出してくれるかにも期待がかかる。

月島基

セリフほとんど「はい」。にもかかわらずちゃんと存在感があった。というか、黙々と淡々と鶴見中尉の命令を遂行するのが逆に怖かった。なお、180cmあることがツッコまれていたが、いざ見てみるとそこまで気にならなかった。むしろ月島の独特な雰囲気がしっかり出ていたと言えよう。

二階堂浩平/洋平

まず日本の映像技術はこんなにすごいのか……と感嘆。1人2役なのでCG合成しているのは間違いないが、ここまで自然とは思わなかった。

原作ではまだ大人しい時期だが、実写版では既にジャンキーらしさが出ていた。初見でもヤバイ奴だとよく分かるだろう。これからもっとヤバくなります。杉本との乱闘も追加され(後述)、二階堂らしさが存分に発揮されていた。

鶴見中尉

公開前から鶴見度の高さが話題になっていた玉木中尉。いや~~~~~気持ち悪かった(もちろん良い意味で)。笑い方や喋り方、動きの1つ1つが鶴見中尉だった。

良かったシーンはいくつもあるが、抜粋して2つ。まずは団子の串を杉元にぶっ刺した後の「ロウソクボリボリしちゃおうか」。目を見開き、歯を剝きだしてガチガチ言わせるのがもう怖すぎる。鶴見中尉のシルエットはおそらく骸骨(死神)がモチーフになっているのだが、実写版でもしっかり死神していた。

もう1つは馬を矢で撃たれ、転げ落ちるシーン。ごろごろ落ちた勢いのままシャシャシャと走るまでが滑らかに描かれ、やっぱり怖すぎる。玉木宏の鶴見中尉を見るためだけにこの映画を観に行ってもいいかもしれない。これが本当の鶴見劇場。

ウイルク

えっと……本人ですか? と言いたくなるほどウイルクそのままなウイルクだった。よくこんな似ている人を連れてきたな……(ちなみに井浦新さん)。

キャラクタービジュアルを見ていただきたい。目や表情からウイルクの「ヤバさ」がにじみ出ているではないか……。

さて、キャラクターについて書きたいことは大体書いたので、あとはストーリーを追いつつ気になったポイントを挙げていく。

絶望の二〇三高地

映画が始まると早速「カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム」の文字が。「天から役目なしに降ろされたものはひとつもない」。この時点で否応なく期待が高まるというものだ。

そしてナレーションは津田健次郎さん! 事前に知ってはいたが、落ち着いた声が映画の雰囲気にマッチしていた。同じ声のはずなのに尾形らしさは全く無く、声優さんは流石だなぁ……と思うなどした。

最初の見どころは二〇三高地である。かなり長い時間をとって戦いを描いており、日露戦争の烈しさがひしひしと伝わってきた。響く銃声と怒号、敵味方入り混じっての大混戦、そして降り注ぐ血の雨。これを生き延びた杉元や第七師団の面々は本当にヤバいのだと改めて感じた。ゴールデンカムイは未だに戦場にいる男たちの物語であるから、二〇三高地の戦いを濃密に描いてくれて嬉しい限りだ。

熊怖すぎ

熊怖すぎ、本当に。序盤と中盤で2回登場するのだが、何が怖いっていつの間にか近くにいるのだ。暗闇に紛れて様子を伺い、いきなり突進してくる。立ち上がれば驚くようなデカさ。北海道の大自然の恐怖の化身は、実写版でも遺憾なく大暴れしてくれた。

中盤で玉井伍長らを蹂躙するシーンでは、手始めにしっかり伍長の顔面を剝がしてくれた。流石に顔面までは映らなかったものの、なかなかエグい。そしてその後は穴の中に飛び込んだ杉元の目線で描かれた。CGの制作費を節約するというのもあるとは思うが、それ以上に玉井らが蹂躙されていく様子が断片的に映るのがもう怖いのなんの。穴に逃げ込もうとして後ろから引きずられていくところなどホラームービーさながら。こんな死に方だけは嫌だな……としみじみ思った。

一方の小熊ちゃんは可愛い可愛いねぇ。谷垣じゃなくて本当の小熊の方です。杉元の服から顔だけ覗かせているのがキュートだった。しかしコタンではイオマンテの話を含めカムイ関連の話があまりされなかった。これは次回以降に回されたのかもしれない。

和田大尉、しっかり登場

カットされると思っていた和田大尉がなんと登場。鶴見が指を噛みちぎった数少ない4人のうちの1人である。取れた指が額に当たるところまでバッチリ再現。また、原作ではちょっと分かりにくいが、実写版では鶴見より背が低く、明らかに圧で負けてしまっているのが演出されていた。春には綺麗な草花の養分になるってよ、良かったね和田大尉。

杉元の過去

原作では断片的に情報が提示されていた杉元の過去については、映画では最後に一気に語るという思いきった変更が成された。2時間の尺なので白石の改変と同様、初見の人にも分かりやすくなっていたと思う。

梅ちゃんを演じるのは高畑充希。綺麗すぎて、キャスト陣を並べて見ると浮いてさえいるのだが、戦いに関与せず、また杉本が金塊を探す動機となる人物として、「綺麗すぎて浮いている」のはとても梅ちゃんらしいと思った。

やはり見どころは寅次を背負い投げてからの「結婚おめでとう」。山﨑賢人の顔の良さがバチバチに活きていた。また、原作ではけっこう後になってから出てくる、寅次が杉元を背負い投げるシーンも入っており、杉元の過去が綺麗にまとまっていた。

まさかの対戦カード・ソリの決戦

どこまでストーリーを回収するのかと気になっていたが、今回は杉元救出作戦までに留まっていた。これがとても良くて、急ぎ足にならずに各ストーリーが丁寧に描かれていたと思う。そして最後の山がソリのシーンである。原作では十数ページ、杉元が師団兵を落とし、アシㇼパさんが鶴見中尉の馬を射る……という流れだったが、実写版では大盛り上がり!

まず、なんと杉元VS月島という誰も予想しなかった対戦カードが実現。確か原作で直接戦ったのは、大迫港の「怒り毛」のときくらいだったはずだ。まさかの供給である。余計なことを言わずに仕掛けてくる月島軍曹、やはり怖い。しかし飛び移ってきたアシㇼパさんに縄を切られてゴロゴロゴロゴロ……雪だるまになったに違いない。

さらに杉元VS二階堂まで! その後の鶴見中尉のシーンは短めなので、実写版第1作の実質的なラスボスはまさかの二階堂であった。馬からソリへ飛び移り、そのまま反対側の馬を蹴ってまたソリへと、相手を翻弄する二階堂。そしてお得意の杉元押さえ付けも披露。兄弟を殺された恨みに満ちた攻撃的な戦闘だった。しかしアシㇼパさんが投げたストゥを杉元がキャッチ、思いっきりぶん殴られて二階堂は退場した。1人になってしまった二階堂と2人揃った相棒の見事な対比だった。ところでご存知の通りストゥの乱用は決して許されていないのだが、この場合はどうなんだろう?

最後には死神・鶴見中尉が煙の中から登場。迫力がすごかった。もちろん我らがコンビも負けていない。杉元が頭を避けると同時にアシㇼパさんが弓を構える! つまり杉元によって攻撃の機先が隠れていたのだった。杉元だけでは成し得ない連携技である。そして先述した鶴見中尉の全力疾走を最後に、戦いは幕を閉じたのであった。

見ているだけでヒンナヒンナ

壮絶な金塊争奪戦にあっても、食事は欠かせない。実写版の金カム飯はすごい。リスのオハウ、カジカのキナオハウ、桜鍋などが登場したが、どれも本当に美味しそう。大画面の極上飯テロである。ちょうど今は寒い季節なので、グツグツと煙をたてるオハウを見て食べたくなった人も多いだろう。実際に作るのはハードルが高いが。

また、金カム名物のチタタㇷ゚も見逃せない。実際のアイヌがチタタㇷ゚と言いながら叩かないことを知っている人も多いと思われるが、映画では「アシㇼパの母親が個人的にやっていたこと」と改めて説明された。アイヌ文化への誤解があってはいけないし、短いが必要なセリフだったと思う。

余談だが、実は原作でも「アイヌはチタタㇷ゚と言いながら叩く風習をもつ」とは言われていない。アシㇼパさんが「チタタㇷ゚っていいながら叩け」と言っているだけである。なので彼女が個人的にやっていることではないかと推測していたが、実写版で答え合わせがあるとは思わなかった。

次回作だよ全員集合!!

最後に、これから先の登場人物がチラッと顔見せ。次回作も乞うご期待ということだろう。第1作のクオリティを見て、第2作も俄然楽しみになってきた。

登場したのは伝説の熊撃ち・二瓶鉄造。狂気の漁奇殺人鬼・辺見和雄。セクシーアイヌキロランケニㇱパ。殺人ホテルの経営者・家永カノ。誑かす狐・インカㇻマッ。以上の5名である。うち2名が怪しいアイヌ、3名が変態である。

優秀なキャスティングのおかげか、一瞬でもすぐに誰が誰だか分かった。特に妖艶なインカㇻマッや美しい家永などに期待がかかる。

さらに最後の最後にはのっぺら坊が登場。アシㇼパの名前を呼び、澄んだ青い目を見せて自分の正体を仄めかした。

次回作では谷垣・二瓶VSレタㇻ、辺見との対決、谷垣VS尾形・二階堂、殺人ホテル全員集合、蝦夷地ダービーあたりまでは確実に描かれるだろう。茨戸の人皮争奪戦、親分と姫の恋物語赤毛討伐あたりは入るかどうか微妙、江渡貝くぅんはたぶん登場しないだろうな……と予想。第1作同様、駆け足にならずに丁寧にストーリーを追ってくれることを期待する。

想像を超えるクオリティで見せてくれた実写版ゴールデンカムイ! 次回作以降も待ち遠しい。